いと思っている。……自分は人生の落伍者であり、人生に対する信念を失ってはいるが、実はその信念を衷心から得たい。そしてそれを得ることは、先ず自分自身に対する信念を得てからでなければ出来ないように思われる。自分自身をつっ立たせることが第一である……。
六
昌作は、夜中に、唸り声を出して眼を開いた、そしてまたうとうととした。そんなことを何度か繰返した。朝の九時頃にまた、自分の唸り声にはっと我に返ると、此度は本当に眼を覚してしまった。
何のために唸り声を出したか、それは彼自身にも分らなかった。或る切端つまった息苦しい考え――どういう考えだかは彼も覚えていない――のためだったか、或は葡萄酒の酔のためだったか、否恐らく両方だったろう。頭の中がひどくこんぐらかって、そして脳の表皮が石のように堅くなって、そして恐ろしく頭痛がしていた。
彼は仕方なしに、顔を渋めて起き上った。冷たい水を頭にぶっかけておいて、かたばかりの朝食の箸を取り、丁寧に髯を剃り、乾いた頭髪へ丁寧に櫛を入れ、それから、やって来た猫を膝に抱きながら、炬燵の中に蹲って、ぼんやり考え込んだ。室の中の空気が妙に底寒くて、戸
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