ど滑稽なくらい突然に、卓子の方へ向き直りながら云った。
「少し腹が空きましたから……。実は食事をしていなかったのです。」
禎輔は呆気《あっけ》にとられてぼんやり眼を見張ったが、やがて機械的に立上って云った。
「つまらない嘘を云ったものだね。……だが、僕も実は碌に食事をしなかったのだ。」
彼は冷たくなった料理を退けて、新らしく料理を註文した。勿論葡萄酒も更に一瓶持って来さした。二人は変に黙り込んで食事をした。食うよりも飲む方が多かった。
「君、今晩は酔っ払って構わないから、沢山やり給い。」
そんなことを云いながら禎輔は、急に昌作の眼の中を覗き込んだ。
「然し、思切って恋をするのもいいかも知れない。恋は若い者の特権だと誰かが云っていた。……だが、あの女のことはなるべく早く達子へすっかり打明け給い。早く打明けなければいけないよ。」
何故? と問い返そうと昌作は思ったが、口を開かない前にその思いが消えてしまった。彼は早く一人きりになりたかった。一人きりになって考えたかった。何を考えていいか分らなかったが、頭の中に雑多な幻影が立ち罩めて、それが酔のために、非常に眼まぐるしく回転して、自分
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