の方のことは、云わないでも分りきった話だ。……それから僕は、次第に考えを変えてきて、君を九州なんかへやらない方がよいと思ったのだ。君を九州へやることは、君自身を苦しめるばかりでなく、僕をも苦しめることになるからね。然し、是非とも君が行きたいと云うなら別だが……君は行きたくはないんだろう?」
「行かないつもりでしたが、然し……。」と昌作は口籠った。
「然し[#「然し」に傍点]だけ余計だよ。そんなことは打棄《うっちゃ》ってしまうさ。……がまあ、今晩はゆっくり話をしよう。そして、このことは達子には内密《ないしょ》にしといてくれ給い。彼女《あれ》の心を苦しめたくないからね。」そして禎輔は何かを恐れるもののように室の中を見廻した。「もっと飲もうじゃないか。どしどしやり給い。」
然し昌作は、云われるまでもなく、先程からしきりに杯を手にしていた。禎輔の話をきいてるうちに、頭の中が変にこんぐらかってきて、判断力を失いそうな気がしたのである。
「人間の頭って可笑しなものだ。」と禎輔は半は皮肉な半ば苛立った調子で云い出した。「思いもかけない時に、思いもかけない古いことが飛び出してきて、それがしつこく絡み
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