かと、変に気を廻してしまった。それを肯定する考えと、それを否定する考えとが、僕の頭の中では争ったものだ。そしてまた一方には、僕は嫉妬の余り君を九州へ追い払おうとしてるのだと、自分で思い込んでしまったのさ。そしてまた、それを自分で責め立てたのだ。君を追い払わなければいけないという考えと、そんなことをしてはいけないという考えとが、頭の中で争ったものだ。こう別々に云ってしまえば何でもないが、そんないろんなことが、それにまた他のことも加わって、一緒にごった返して、僕の頭はめちゃめちゃになってしまった。全く神経衰弱だね。神経衰弱にでもならなければ、こんなことを考えやしない。……それでも僕は、自分を取失いはしなかった。そして達子のあの率直な快活さも、僕には力となった。それからいろんなことがあって、結局僕は達子を使って君の心を探偵してみたのだ。そして、片山さんはなぜ私を九州なんかへ追いやるのだろうかと、君が達子へ聞いたことと、君が他に若い女を愛してるということとが、僕にとっては光明だった。なぜって、君がもし達子へ心を寄せてるのなら、自分で気が咎めて、達子へ向ってそんなことを聞けるものではない。若い女
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