とう》がつきませんでした。何しろ誰もはいったことのない山の森で、昼でさえその中はまっ暗なほどおい茂っていて、枯枝《かれえだ》朽葉《くちは》の積もり積もった上に、茨《いばら》や葛《かずら》がはい廻っていて、いくら象でもなかなか上って行けませんでした。その上、森の奥深くへ来ると、森全体が恐ろしい勢《いきおい》で唸《うな》り出しました。けれど王子達の方には宝の鏡がありました。茨や葛の中にふみ込んでも、方向に迷っても、森が唸っても、一々鏡に照らして難をさけ、次第《しだい》に山の中ほどまで登って参りました。
 やがて皆は、森の少しうち開けた平たい所に出ました。見ると、向こうに大きな樫《かし》の木が立っていまして、その幹《みき》にある洞穴《ほらあな》みたいな穴の所に、金色《こんじき》の大きな鳥がとまっていました。皆はそのまぶしいほどの美しい金色の光に、あッと言って驚きました。鳥は昨日の疲れか、首を垂れて眠っているようでした。
 国王は驚きが静まると、「それッ!」と家来《けらい》達に合図をして、鏡を差し上げながら鳥の方を照らしました。そのとたんに鳥は首を上げて、皆の方を見て、飛んで逃げようとしました
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