んでした。
 王子は初めて悲しくてたまりませんでしたが、そのうちに、ふと考え直してきました。国王や強い家来達の助けをかりて、あの夢の精を生捕《いけど》りにすることが出来たら! そう思うと急に元気が出てきました。
「それでは僕がその金色《こんじき》の鳥の所へ案内しましょう。そのかわり鳥を少しも傷つけないで生捕りにして下さい」と王子は頼みました。
 国王は大変喜んで、王子の言う通りにすることになりました。
「だが、誰も武器を持ってゆかないかわりに、知恵の鏡だけは持ってゆく」と国王は言いました。
 知恵の鏡というのは、その国に昔から伝わってるものでありまして、それで照らすと、どんな化《ば》け物でもすぐに正体を現わしてすくんでしまい、どんなものでも人の思うままになるという、世界に二つとない宝でした。

      五

 夜が明けると、国王と王子は強い家来を二十人ばかり引き連れ、皆一人一人象の背に乗り、一つの象には大きな鳥籠《とりかご》をのせて、城の後の森の中へ上がって行きました。
 王子は道案内者としてまっ先に進みましたが、一昨日の夜ほの白い道が続いていたのはどの方向だか、さっぱり見当《けん
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