てやる」
 それに反対する者は、わずかに三人しかいませんでした。その一人は女王でした。
「そんな無謀なことをなされますと、どんな災いが来ないとも限りません」
「なに、魔法使いくらいに負けるものか」と王は一|言《ごん》に退《しりぞ》けました。
 第二の反対者は、昔からその国にいる年とった家来《けらい》でした。
「あの森に魔物がいると言われていますのは、実は嘘でありましてこの城を守って下さる神が住んでいられるのであります。決して森にはいるなとは、代々の王様の言い伝えであります。それを破られてはよろしくございません」
「なに」と国王は言いました。
「魔物であろうと神であろうと、王子をたぶらかすようなものは、決して許してはおけない」
 第三の反対者は王子自身でありました。
「僕はたぶらかされたのではありません。本当の夢の精に逢ったのです」
「それでは、その夢の精とかをひっとらえてやろう」と国王は言いました
 その上、王子が帰られたのを喜びに出て来る強い家来《けらい》達が、皆して国王の企《くわだ》てに賛成しまして、すぐにも魔法使い退治《たいじ》の用意にかかろうとしていました。もうどうにも出来ませ
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