る事柄を他人にあまり話したがらないのは、文学者や哲学者や美術家や音楽家に最も多いようだが、何故だろうか。平素精神的に余りに苦労してるからだろうか。
B君の死を自殺だったかも知れないなどと考える根拠は、実は殆んどない。こじつければあるにはあるが、それは文学的なものにすぎないように思われる。
B君は当時、家運が傾いていた。がこの点については私はよく知らない。但し破産とか或は閉店とか、そんな状態には立至っていなかったことは、其後店もなお立派に立っていることで明かである。
B君と芸妓K子とのことが、私の知ってる主なものだ。数年に亘る関係だったらしい。ところが、K子に旦那が出来かかって、その世話になるとかならないとかいう話だった。それでみると、K子はB君一人を守ったわけではないらしい。またB君も、ほかの土地ではちょいちょい浮気をしてたことを私は知っている。そしてK子の旦那云々の話を、匂わせられるか感ずるかした時、B君は微笑んで云った。
「旦那をもつのもよかろう。そしたら僕は遠慮するよ。」
「いやいやいや、そんなのいやよ。」とK子は云ったそうである。
それはまあ、大したことではないかも知れ
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