するには禁物である。殊に、新たな文化を建設せんとするには禁物である。高きへ高きへと就く思想こそ今や最も必要である。新文化建設への地ならしは甚だ結構だが、それをして高きを崩してすべてを低きに平均せしむるものたらしめず、低きを向上さしてすべてを高きに平均せしむるものたらしめることは、出来ないものであろうか。
 ――これは単に万人を啓蒙することによって得らるるものではない。万人各自の自覚を俟って得らるるものである。それを望むことが無理だとするならば、せめて少数の人々にでもよろしい、この自覚を持って貰いたい。それらの人々によってこそ、新たな文化が建設せらるるであろう。
 以上のような呟く精神は、もはや既に明かな如く、政治的精神ではない。またひろく一般文化的精神でもあるまい。それは単に文学的精神であろう。なぜなら、それは、心の持ち方とか、生活の心構えとか、人格のあり方とか、物の考え方とか、そういうものを中心問題とするからである。そしてそれが説くところの新たな文化の建設というのは、文学の新たな復興創造と解せられるのである。
 この文学的精神は、如何なる事態のなかにも一種の理想主義を把持するし、如何
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