た所であり、壇上には、昊天上帝に配して祖宗の神位を奉祀し、日月星辰風雲雷雨の諸神を従祀されたのである。
壇は天円地方の義に則った広大な円形の構築、白大理石の欄干をめぐらした三重の丘壇で、各丘壇毎に九つの階段をのぼって、壇上に出で、天数に応じた九つの敷石をふんで、中央の円形の大敷石に達する。
その中央の敷石の上に、絨緞を敷き碁盤を据え、端坐して碁石を手にしたならば……という途方もない夢想を私は懐いたのである。その夢想と共に、白雲青山の歌が胸に浮んできたのである。
この話を、北京で幼時を過したという呉清源氏に私は語った。呉氏は私の話にうなずいてくれて、更に、天壇での碁の第一着手は天元に下すべきであろうと云った。まさに、至芸の人の言である。
L
或る女人の話――。
そこは、鋪装した広い街路だが、新らしく開かれたばかりのものであり、ゆるやかな坂をなしており、片側には小さな家が建並び、片側は神社の淋しい境内となっていて、人通りも少い処である。そこを、或る日の午頃、彼女は通りかかった。
すると、神社よりの片隅に見すぼらしい身装の年老いた人が、しょんぼり立っている。可哀そ
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