痒さを我慢してる精神や、擽ったさを我慢してる精神などが、在るわけである。
更に、絵画や彫刻や文学作品などにも、痛さと痒さと擽ったさのどれかを我慢してるものが在るわけである。――私はそういうものを少し物色してみたことがある。非常に面白い結果を得た。だがここにはそれを列挙するを憚るとしよう。
E
仔細あって、各地の民話を調べていたところ、随分面白いのがある。ちょっと風変りなのを拾い出してみようか。――これはフランスのべリー地方のもので、簡略に書き直してみたもの。
――バルバリー、タルタリー、パリーからのお戻りか。あちらに何かあったかね。
――銀の羽子の鳥を見たよ。
――そんなのがいるものかい。
――嘘か本当か、伴の男に聞いてみなさい。
――おう伴の人、銀の羽子の鳥を見たとか、御主人が云うのは本当かね。
――それは違うよ。私は銀の翼の鳥を見たが、その鳥のことでもあろう。
――バルバリー、タルタリー、パリーからのお戻りか。あちらに何かあったかね。
――ぼうぼう燃えてる池を見たよ。
――そんなのがあるものかい。
――嘘か本当か、伴の男に聞いてみなさい。
前へ
次へ
全40ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング