強みを持つ。そしてこの後者の強みは、「文学以前」のものを大胆にとり入れることによって、更に倍加するであろう。
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近代文学の※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]きの一つは、文学の過剰を擺脱せんとすることにある。
その最も顕著な例は、新らしい心理的探求の方面に認めらるる。
多くの哲学者や心理学者によって、吾々の精神のうちには広汎なる無意識の世界が存在することを、暗示され指示さるるや、表面的な泡沫的な狭小な意識の世界を去って、その深遠広漠たる無意識の世界へ、文学も直ちにとびかかっていった。そしてここで注意すべきは、在来の心理主義が、行為を説明せんがための心理解剖に止まり、ややもすれば、仮定の上に立つ実験室的研究に陥りがちだったのに反して、新らしい心理主義は、精神内部の無意識の世界――現実の世界――を直接に描写しようとする、大なる野心を抱いたことである。「説明のため」から「描写のため」へのこの飛躍は、創作態度としては、また文学の過剰からぬけ出す一方法でもあった。そこでは、構想や表現方法など、凡て文学的扮装は、もはや第二義的な位置しか占めない。
斯くて、超現実主義
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