しい。そして見栄から種々の流行が生れるのであろう。

      D

 帝都の上空を飛ぶ飛行機――殊に軍用飛行機に対して、事変以来、市民の態度が著しく変ったようである。以前は、飛行機の爆音を耳にし、或は飛行機の姿を認めても、街路を行く人々はただ、ははあ飛んでいるなと内心に思うだけで、むしろ素知らぬ様子をすることが、文化人らしい一つのポーズでさえもあった。特殊な長距離飛行機など、一種のスポーツ的興味を伴うものは別として、普通の飛行機に対する関心は、謂わば田舎者めいた野暮くさいものとの感じがあり、街路に立止って飛行機を眺めるなどは、一般の人々の――殊に、悲しい哉インテリ階級の人々の、へんに照れくさい思いをする事柄だったのである。
 然るに、事変以来、飛行機に対する関心は俄然高まり、機影を認める時は固より、その爆音を聞いただけでも、会話を中止し街路に立止って、相手の肩を叩きかねない様子で上空を仰ぐことが、自然のこととなり、時には、尖端的な文化人らしい態度とさえも是認されるに至った。
 この変化は、注目に価する。そしてこれは勿論、戦地に於ける我が軍用飛行機の壮挙、渡洋爆撃とか荒鷲とかいう言葉
前へ 次へ
全24ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング