は倉庫ともつかない物置場であったらしいのを、山小屋風に改造したもので、広い土間と框の低い小部屋が一つ、窓が狭くていつも薄暗かった。商売はたいてい夕方から夜にかけてだが、電球の燭光が足りないのでやはり薄暗かった。椰子の実を灯籠風に刳り貫いたのへぽつりと灯火がともって、入口にかかげてある、それが目標しだった。中にはいると、長髪で没表情な大田梧郎が、また時には、いがぐり頭で愛想笑いを浮べてる戸村直治が、酒を出してくれた。日本酒、ビール、各種のウイスキー、時には焼酎もあったが、この焼酎だけはとびきり上等だった。料理は殆んど出来ず、ピーナツ、するめ、ハム、※[#「缶+権のつくり」、211−上−23]詰類に過ぎなかった。客はたいていインテリ層の顔馴染みの者で、見識らぬフリの客には居心地がわるかった。店の名前は、大田梧郎の名を取ってただ「五郎」で、飲み仲間では、五郎へ行こうとか、五郎さんとこへ行こうとか、そういう風に言われていた。
この酒場のどこが気に入ったのか、波多野洋介はしばしばやって来た。もっとも、私達が彼を誘ってくることも多かった。彼は帰国後、当分の間はという殆んど無期限の有様で、ぶらぶら
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