あたりの品物のようでございます。」
「ああそうか。……それから、家に時々、穀物類の商人とかがやって来て、奥の室で人を遠ざけて、伯父さんと長い間話しこんでゆくことがあるそうだが、それは本当の商人かね。」
「私には分りませんが、あなた様はどうお考えでございますか。」
「またか。分らないから聞いてるんだよ。」
「普通の商人でありましたなら、それほど長い時間、秘密に話しこむこともございますまい。」
「そうか。……それにしても、伯父さんはよく、済南の紅卍字教の母院や青島の后天宮に、詣られるそうだが、本当かね。」
「本当でございましょう。紅卍字会には相当な寄附金をなすっておいでになります。また、青島の后天宮は、何を祭ってありますところか御存じでございますか。」
「知らないね。」
「あれは、舟神と財神とを祭ってあるところでございます。けれど旦那様はもう、船の方には関係はございません。」
「すると財神だが………まだ財産を殖したいのかな。」
「財産はいかほどあっても足りない場合がございましょう。」
「どんな場合かね。」
「私にはよく分りませんけれど、財産はほかのものと直接につながることが多いようでござい
前へ 次へ
全28ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング