なんでもいいから、持って来てくれ。」
そして月の光の中を、歩きまわりました。
やがて徐和が、水瓜の種と落花生とを盛った皿と、グラスを、銀の盆にのせて持って来ますと、曹新は彼を自分の横に坐らせて、ウイスキーをついでやりました。
「いろいろ君に聞きたいこともあるから、まあ、飲みながら話そう。」
徐和は素直にグラスを受けました。
曹新は声を低めて、ゆっくりといい出しました。
「君はいろいろ知識もあり、頭もよく、それにもう相当な年配になっていながら、伯父さんのいうことには何一つ逆らわず、こんどの伯母さんのこともそうだし、全く盲従しているようだが、それは一体、どういうわけかね。」
「私は召使の身分でございます。」
「召使はそういうものかね。」
「それにまた、これはいつぞや申したことでございますが、私の親父はもと旦那様と御懇意を願っておりまして、何かとお世話になったこともありますそうで、その親父が亡くなります時に、善悪ともにこちらの旦那様のために尽すように、善悪ともにと、くれぐれもいい遺しました。」
「善悪ともに……。」
「はい、これはもうどうにもならないことでございます。」
曹新は黙り
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