した。
 可なり長く待たされた後、薬を貰って外に出ると、もう薄暗くなりかけていた。彼は知らず識らずに足をゆるめた。慌しいようでしめやかな夕暮のなかを、何処までもゆっくり歩いて行きたい気がした。保子の前へも出たくなかった。頭の中に描いていた幻が、現在の保子の姿に蔽われつくして、ただやるせない憧憬の気持のみが、彼のうちに残されていた。その気持がどういう方向を取るか分らないのを考えると、彼は云い知れぬ胸の戦《おのの》きを感じた。と共に、保子に対して無力である自分自身が、不安になり恐ろしくなった。
 それでも、彼はいつのまにか家へ帰ってきた。保子は隆吉の枕頭にぽつねんと坐っていた。彼がはいっていくと顔を挙げた。
「早かったわね。……私慌ててたものだから、あなたまで騒がしてお気の毒ね。御免なさい……何だかがっかりしてしまったわ。」
 そう云って彼女は、静かな無心の眼付で周平を見た。
 隆吉はすやすやと眠っていた。
「お食事の支度が出来ました。」
 そう女中が云って来た時、保子は床柱に軽く上半身をもたせかけて、膝をくずしながら大儀そうに坐っていた。その膝を重たそうに引きずって、隆吉の枕頭に匐い寄っ
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