。凡ての物が閃きながら揺いでいる。赤や青や緑の光線が縦横に入り乱れている。距離が妙に縮まって見える。気圧が極度に低くなったような心地。
歩いていると、膝関節に怪しい感じがする。足の運動が、非常に力強いわりに重々しい。変に自分の意志とそぐわない。いつ棒立ちになって動けなくなるか分らない気がする。
夕方、精神的な漠然とした苦悶を覚える。酒をやたらに飲む。酔ってるうちに意識を失ってしまった。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
十一月十三日――終日胸がむかむかする。
十一月十四日――甚だしく精神の疲衰を覚ゆる。しきりに眠い。そのくせ、横になっても眠れない。妄想が相次いで起ってきて、いつまでも止まない。はっきりした推理が出来ない。頭脳の一部が痲痺したのではないかと思う。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから1字下げ]
心が暗澹たる影に包み込まれる。服薬を続ける。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
十月十八日――怪しい誘惑が働きかけてくる。高い絶壁の上に身を置く時には、絶壁の下に身を投じてみたらという誘惑――という
前へ
次へ
全293ページ中89ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング