為であり、また、最も卑劣な賤しい行為であった。然し、一度滑りかけた心はどうしても止まらなかった。その上、口実は如何様にもついた。日記によって保子の本当の心を知ることは、変な所へ陥りかけた自分自身を正当な位置へ引戻すべき、唯一の方法らしく考えられた。それによって未来が安泰となれば、一時の罪は十分に償われる筈だった。あの時、内密で読んできかせようと云った保子の態度を考えると、全部を見せたい気持が、自分を啓発したい意志が、或は彼女にあるのかも知れないのだった。……兎に角、行く所までいったら後は自然に途が開けてくるだろう、そう彼は結論した。
 斯くて彼は、彼女の日記を探すべき機会を窺った。
 女中は洗濯物をしたり居眠りをしたりして、なかなか家を空《あ》けなかった。それでも時々買物に出かけた。周平はその僅かな機会をも遁さなかった。後には可なり大胆になって、用を拵え出してはその使に行って貰った。不用心だからという口実で、裏口はすっかり閉めさせ、玄関の硝子戸には釘をさした。そして彼は保子の日記を探した。
 けれども、箪笥などにはさすがに手をつけ得なかったし、机の抽斗や袋戸棚や手文庫などを検べている最
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