った。竹内は噂か本当か分らない面白い実例をしきりに持ち出していた。何かしら饒舌らずにはいられないらしい調子だった。それへお清が、或は頓馬な或は適切な茶々を入れていった。
周平は一人黙々として、時々強い洋酒の方へ手を出しながら、煖爐の火を見つめていた。どうしても皆と調子を合せられなかった。それがまた反撥的に心に返ってきた。しまいにぷいと立ち上って、向うの長椅子に半身を横たえた。
然し誰も注意を向けなかった。話がはずんでいた。睾丸移植の大手術が行われて、睾丸を失ってる男が他人のを片方貰ったのだが、それでもし子供が出来たら、その子は他人のか自分のかという問題だった。
周平はそれらの話をぼんやり耳にしながら、自分一人の考えを追求していった。いつまでも愚図ついてるのが堪えられなかった。彼は自分と皆とを距つる深い溝渠を感じた。何事にも興味と好奇心とを覚えて凡てを摂取して飽かない青年の気概から、いつしか遠く離れてしまって、暗澹たる途にさ迷ってる自分自身の姿が、まざまざと見えてきた。保子のこと、お清のこと、隆吉のこと、幽鬼のような吉川のこと、それらが一団となって自分の精神生活を塞いでるのが、貧し
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