団一つきりしかいけとかないから、火を燃すのに一寸厄介だわ。」
それでも、やがて火が熾って、それを火燵に入れてしまうと、お清は縁側に出て何やらこそこそ探し始めた。縁側の端には、孤格子の鼠不入《ねずみいらず》の前に、七輪や徳利や鍋などが散らばっていた。彼女は小さなコップと瓶詰の酒と味附海苔の鑵とを持ってきた。
「お腹が空いちゃったけれど、何にもないからこれでごまかすのよ。」
周平は眼を見張った。
「君は家でも酒を飲むのかい。」
「まさか。」と云って彼女は笑った。「これは取って置きのものよ。少し古いけれども、腐ってやしないでしょう。腐ってたって構やしない。……あ、そうそう、いいものがあるわ。」
彼女は茶箪笥から砂糖豆のはいってる紙袋を取ってきた。
「これで洗いざらいの御馳走よ。」
そして二人は、火燵にはいって顔を見合した。
ことりとの物音もしなかった。変に威圧するような静けさだった。周平は呆《ほう》けた気持で、彼女の顔を見つめた。今迄気づかなかったことだが、額から眼の下へかけて薄い雀斑《そばかす》があった。けれど、くっきりと切れた上眼瞼の二重が、如何にも美しかった。彼女はその眼をち
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