るの?」
 お清は寄ってきて、彼の顔を覗き込んだ。彼は黙っていた。
「およしなさいよ、考え込むのは。それでなくっても、この室は何だか淋しくていけないわ」
 彼はぼんやり彼女の顔を眺めた。いつも忙しそうにあちらこちら往き来してるのが、彼には腑に落ちなかった。どの家でも、またこの家でも、他の女中は大抵同じ所にじっとしているものなのに、お清一人が例外だった。
「君はどうしてそう方々の室を飛び廻るんだい。」と彼は云った。
「私が行かなけりゃ治りがつかないからよ。」
「なんだ、威張るなよ。」
 お清は声高く笑って、煙草に火をつけた。その煙をふーっと口の先で吐きながら云った。
「私一つ所にじっとしているのは嫌い、気づまりでいけないから。……でもあなただけは例外よ。」
 それでも、煙草を一本吸ってしまうと、また出て行こうとした。周平はいきなりその袖を捉えた。
「何処へ行くんだい。」
「一寸|階下《した》のお客をみてくるのよ。待っていらっしゃい、じきに来るから。」
 そして彼女はにっこり笑ってみせた。然し彼は袖を離さなかった。
「困るわねえ。……ほんとに忙しいのよ。」
「嘘云うない。他に女中達がいるじ
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