る。何かに縋りつかないではおれない気持だった。冷たい夜の空気が窓から流れ込んできて、その気持を益々痛切になしてくれるのが、今は却って快《こころよ》かった。
その窓を、お清がやって来てはいつも閉めた。
「寒いじゃありませんか。」
「そんなら煖爐《ストーヴ》でも据えてくれるがいいよ。」
「いくら煖爐を置いたって、あなたみたいに開け放しちゃ、何にもならないわよ。」
窓を閉められて、お清の顔をじっと見てると、周平は俄に寒さを感じ出した。足先と手先とに二つ火鉢を置いていても、ちっとも暖くなかった。
「それ御覧なさい、震えてるじゃないの。」
彼女も肩をすぼめて火鉢の上に屈み込んだ。真白な頸筋から甘酸《あまず》っぱい匂いが洩れてきた。周平は眼を外らして、冷たくなった杯を口へ運んだ。
「熱いのを持って来ましょうか。」
「ああ。」と彼は機械的に返辞をした。
新らしい銚子を持って来る時、お清は扉を開くと同時に、一寸微笑んで睥むような眼付をした。それがともすると、保子の眼付によく似ていた。周平は気持が胸の底へ底へと沈み込んでいった。何も話の種が見つからなかった。お清も別に話題を探すらしくもなかった。
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