可なり広い横町が、他の裏通りと直角に交叉して斜左へ曲ってる、その角の所に、蓬莱亭という緑色に塗られた洋館があった。階下がカフェーになっていて、二階がレストーランだった。その上に、後から建て増した狭い三階がついていて、表からは塔のように見えていた。――その家に、お清《きよ》という女中が居た。
 背の高い痩せた女だった。取りたてていうほどの容姿《きりょう》ではなかったが、一寸印象を与える顔立だった。顔の下半分が可愛かった。少し尖り気味の頤に終ってる頬の線が、強いて結んだような小さい口の横で、ぽつりと肉の膨らみを見せて、甘ったるい言葉つきをしそうな若々しさがあった。にも拘らず、顔の上半分が妙に老けていて、骨っぽい額に曇りを帯び、蟀谷《こめかみ》の皮膚がゆるんで皺を寄せていた。鼻と眼とに特長があった。さほど高くない鼻だったが、円みを持った眉根まですっと通っていた。黒目の小さな二重眼瞼《ふたえまぶた》の眼が絶えず敏活に働いて、捉え難い閃きを放っていた。
 そういう彼女の顔立をいつのまに覚えてしまったか、周平は自分でも知らなかった。彼や彼の仲間は、そのカフェーへ度々行きはしなかった。二階の料理を食
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