。」
 それでも二人は、隆吉を連れて、結局出かけることになった。保子はいやに冷かな態度をしていた。周平はそれを横目で窺いながら、隆吉の方をばかり相手にした。
 彼には保子の気持が少しも分らなかった。彼を引止めたり外に誘い出したりする彼女と、何かに苛立って冷淡な素振りを見せる彼女とが、別々なものとなって彼の眼に映じた。もうどうでもいいのだと思っても、それがやはり気にかかった。
 彼女は少し身を反らせ加減にして、先に立って歩いて行った。小さくきちっと背中高に帯を結んで、上から絽縮緬の羽織をしっくりとまとい、真直に伸した手を足の運動に合して振りながら、すたすた歩いて行く痩せ形《がた》の姿は、或る近づき難い冷たさを持っていた。そして彼女は余り口を利かなかった。獣や鳥の檻の前を、一寸足を止めては先へ先へと通りすぎた。周平と隆吉とは後れがちになった。活動を見ても彼女は別に何とも云わなかった。結末近くになると、人が込まないうちにと早めに立ち上った。帰りに物を食べていくでもなかった。
 然し、家に帰りつくと、彼女は菓子や珈琲を出さした。横田をも書斎から呼んできた。見たもののことを面白そうに話した。帰る
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