持が湧き上ってくるのを、彼はじっと押えつけた。最初苦学をも辞さないと決心した時のことが、頭の中に浮んできた。記憶の底にこびりついてるあの晩の夢が、また思い出された。逞しい乞食の姿が見えてきた。彼は自ら云った。「自分は逞しい乞食となりたくはない。逞しい闘者となりたい。」
 それでも、決心だけはあっても、これからどうしていったらいいか、殆んど見当がつかなかった。思いあぐんだ末には、ただ保子のことがしみじみと考えられた。
 野村からはやがて、「労働組合と労働者」を送ってきた。周平は一寸覗いてみて驚いた。文章がいやにひねくれてる上に、自分の知識の範囲外のことなので、理解するのが非常に困難だった。更にそれを日本文になおすとなると、やたらに出てくる経済上の言葉を、どう訳していいか分らなかった。その上彼は、英語と独逸語しか知らなかった。中に出てくる仏語や伊語を大学の誰彼に聞くのも大変だった。彼はその文章に少し馴れるために、三日もかかってざっと通読してみた。――労働組合は、初め資本家に対する労働者の自己防衛機関として出来たものだが、次に共済機関となり、一転して戦闘機関となった。そして、戦闘の勝利と共に
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