戍った[#「見戍った」は底本では「見戌った」]。見戍りながら[#「見戍りながら」は底本では「見戌りながら」]黙っていた。
そこへ、隆吉がかけ出してきた。
「僕遊びに行ってもいいの。」
「後になさい。」と保子は答えた。「井上さんがお帰りなさるんだから。」
「井上さんの所へ行くんだよ。」
「そう。でも今日はお止しなさい。またこの次にしたらいいでしょう。」
「この次にはついて行ってもいいの。」
「ええ。」
隆吉は暫くじっとしていたが、つまらなそうな顔をして其処に寝転んだ。
周平は息苦しい気がした。立ち上って二階の室に上った。着物の包みを枕にして横になった。うち開いた東の窓から、眩しいほどの日の光りが室の中に流れ込んでいた。彼は立ってその窓を閉めた。暫くすると、またその窓を開いた。何れにしても落着かなかった。気持がじりじりしてきた。
女中が彼を呼びに来た。表に俥《くるま》が一台待っていた。彼は喫驚した。
「歩いて行きます。」と彼は保子の前に云った。
「いいから乗っていらっしゃい。」と保子は云った。
彼は云い張った。僅かな風呂敷包み一つだし、そう遠くもないし、それにまた、俥になんか乗っ
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