どうしようという気は殆どなかった。どん底に落着いたような自棄的な心だけが、いやに真剣になっていた。
「少し外に出てごらんなさいな、朝晩はいい気持よ。」と保子はよく云った。
「ええ。」と周平は答えたがやはり出かけようともしなかった。
保子は彼の眼の中を覗き込んだ。
「あなたはこの頃よっぽど変よ。私達の留守中に何かあったのね。こないだ泣いてたのもそのことでしょう。包まず云ってごらんなさいな。一人で考え込んでるよりも、云ってしまった方がさっぱりしていいものよ。」
「それほどのことじゃないんです。」と周平は答えた。
「じゃあなお云ったって差支ないでしょう。」
「でも今は云いたくありません。」
「そう。」そして保子は一寸間を置いて眉を挙げた。「だけど今にきっと云いたくなるわよ。もうそろそろなりかかってるんじゃないの。」
周平は彼女の顔を眺めた。曇りのない輝いた二つの眼が、じっとこちらを覗いていた。ただ澄みきってるだけで、その底には何にも読み取れなかった。彼は自分の心が慴えてくるのを感じた。それが我ながら腑甲斐なかった。
「もう暫く、一人で考えていたいんです。」と彼は云った。「隆ちゃんの病気も
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