ろしくなかった。場合によっては、保子の前に赤裸な自分の心をさらけ出してもいい、と彼は思っていた。さらけ出してどうしようという考えはなかった。たださらけだしてしまったらどうにかなりそうだった。彼はまともに保子の顔を見返した。
「井上さん、」と遂に保子は云い出した、「あなた先刻、悲しい夢を見たと云ったわね。どんな夢?」
周平は一寸答えに迷って黙っていた。
「夢なら話したっていいでしょう。え、どんな夢なの、仰しゃいよ。」
「夢のことなんかどうでもいいんです。」と周平は答えた。
「でも、その夢のことで泣いてたじゃないの。」
「あれは嘘です。」と周平は吐き出すように云ってのけた。
保子は軽く微笑んだ。一寸間を置いてから云った。
「とうとう白状してしまったわね。だからあなたの嘘は罪がなくていいわ。」
周平は俄に眼の底が熱くなるのを感じた。涙を落すまいとして歯をくいしばった。すると保子は、しみじみとした調子で云った。
「だけど、悲しいことなんか、本当はみんな夢にすぎないものよ。時たって後で考えてみると、夢をみたような気がするものよ。泣き足りないといつ迄も頭にひっかかるけれど、思うまま泣いてしま
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