。砂があったり、小石があったり、泥があったりして、泥のところには藻が生えてるの。藻の中にいろいろな魚がいて、みんなでしゃくいに行ったわ。魚はなかなか取れないけれど、小蝦はよく取れたわ。大きな蟹に指をはさまれて、泣きだしたこともあるの。」
「喜美ちゃん、そんなにおてんばだったの。」
 彼女は頭を振って笑った。
「いいえ、あたしじゃないのよ。だって、まだ五つか六つだったんですもの。」
「時々、田舎に行ってみたいとは、思わないの。」
「でも、行ったって、つまらないでしょう。」
「そりゃあ、面白いことはないよ。けれど、町中に住んでると、僕なんか、時々田舎に行きたくなる。焼け跡の原っぱに、こうしてじっとしてても、いい気持ちだからね。ただ野原には、焼け跡でもやはり、水のきれいな川がほしいよ。川の流れが一つあれば、野原がほんとに生きてくる。」
 この焼け跡に、今迄見られなかった美しい都会が出現するのは、いつのことやら。まずそれまでは、捨て置かれてる空間で、そこに、麦が伸び、蚕豆の花が咲き、雑草が茂り、灌木の茂みも出来るだろう。それらを眺めるのは楽しみである。だがこの楽しみを充実させるには、一筋のきれ
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