いな小川の流れが必要だ。――そのようなことを、私は喜美子を相手に独語するのだ。喜美子は微笑みながら私の言葉を聞いてくれる。ただ聞くだけで、はっきりした反応は示さない。然し彼女自身、田舎について何よりも小川のことを記憶しているではないか。その記憶を嬉しく思い、それに頼って、私は私の独語を続けるのだ。
独語の合間に、振り向いてみると、彼女は小川のほとりにでもいるかのように楽しそうだ。その眼眸の清らかさが、肉附や皮膚の薄い顔の明るさをいっそう際立たせ、片方の細長い小さな糸切歯が、薄い膚の微笑みの可愛さをいっそう際立たせている。その全体が、なにかしら運命に対する抵抗力の弱さ、つまり薄命なものを思わせる。私が庇うようにかき抱いてやったら、彼女はどうするだろうか。
私が口を噤むと、彼女も黙っている。買物袋を膝にかかえ、白いハンケチを持ちそえ、赤い帯をしめ、かすかに化粧の香りをさせてる、都会の娘だ。田舎の娘ならば、石に腰掛けて夕日を眺めるなどは、退屈に違いない。――夕日は薄い雲に包まれ、円盤のようにくるくる廻りながら、速かに沈んでゆく。冷い風が地面に沿って足下を流れる。
「少し歩こうか。」
「え
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