な姿勢をしたりして、壁に写る影法師をしきりに研究しだした。両手を拡げて飛び上ったのが、飛行機の姿だったし、首を振りながら片足で立ったのが、お化の姿だった。其他いろんな物が出て来た。
「お止しなさいよ。そんなことしてると、今に影に呑まれてしまうわ。」と綾子は云った。
影に呑まれるというのは、彼女の作り出した言葉だったが、それが実際、変な響きを皆の心に伝えた。
「なあに呑み込まれるものか、姉さんを呑み込んでやらあ。」
そして晋吉は、獅子舞いの面の恰好をして壁に写した。
その様子には清まで笑い出したが然し彼女は内心ひどく慴えきっていた。女中部屋の中には晩になると決して足を踏み入れなかった。
秋子は表面だけで皆に笑ってみせながら、内密で良人に断言した。
「あなた、何処かへ越しましょう。私もうこの家には一日も嫌ですわ。」
「そうだね。」と晋作は曖昧な返辞をした。
気のせいだと云えば云えないこともなさそうだったが、それにしても、女中部屋の押入はやはり不気味で変だった。その上、影法師に凝り出した晋吉の様子までが、心の持ちようで不気味にも思われた。
「だが、そんな筈はない。」――「然し、何だ
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