、立ちつくしたまま黙り込んだ。
 晋作は障子をさっと開いた。向うの高窓が、死人の眼のようにぼーっと浮出していた。ぞっと薄ら寒い気がした。
「あら、どうしてこの室の電気だけつかないんでしょう?」
 秋子の言葉に皆初めて気付いた。晋作は中にはいって電燈の捻子《ねじ》を捻ねった。ぱっと明るくなった。が皆は云い合したように、そのまま座敷へ戻った。
「馬鹿げた入道だね!」
 晋作は強いて笑おうとした。その笑いが変に硬ばってくる所へ、清は別なことを主張しだした。
「でも初めは、たしかに電気がついておりましたが……。」
 女中部屋の電気は、いつもつけっ放しにしておかれたのだった。その晩も停電の前までは、たしかについていた筈だった。
「そうれごらんなさい。おかしいわ!」と口には云わないが目付に見せて、綾子は皆の顔を見廻した。
「それも大入道のせいかな。」
「やあ、此処にも大入道が居るよ。」
 と晋吉は立ち上って、背延びをしながら向うの壁に、自分の影を写していた。
 笑っていいか恐がっていいか分らない、変な其場の気分だった。
 そしてそれが、後まで続いた。
 晋吉は夜になると、電燈の位置を変えたりいろん
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