ていたのだが、中井刑事が訪れて来た。
 その日曜の朝をぼんやりしていた晋作は、驚喜の余り飛び上って、自身で玄関まで出迎えた。
 刑事の顔も、彼のに劣らず輝いていた。左の手先に軽くソフト帽を抱えて、足を心持ちふんばり加減につっ立ち、引緊めた浅黒い顔の皮膚の下には、晴々とした笑みが溢れていた。
 二人は親しい挨拶を交わした。
 然し、二階の座敷に通されると、俄に刑事は厳粛な態度に変った。半ば吸いさしの朝日を静に火鉢の灰にさして、一度に凡てのことを考えめぐらすような眼付をした。
「実は、あなたへお知らせすべきかどうか、少なからず迷ったのですが、怪しい噂を今迄平気でいられた所から考えて、申上げても別段騒がれることもないと思ったものですから、それにあの時のお頼みもありますし、定めしお待ちになってることと思ったものですから、旁々伺ったような次第です。然しこの話は秘密にして頂きたいものです。いずれ発表して差支えない時期が来ることと思いますが。まだ事件が予審中なものですから。」
 晋作は意外の感に打たれて、身ずまいを正しながら、他言しないと誓った。
 そして、刑事の話は更に意外だった。――あの板の、焦
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