と綾子までが眠りから覚まされた。見ると、晋吉が其処につっ立っていた。没表情な顔で石のように固くなっていた。漸くにまた寝かしたが、物に憑かれたような眼を長く見開いていた。――影が無くなった夢をみたのだそうだった。自分の影がなくなって、何処に写しても出て来ないので、一生懸命にその影を探し廻ってると、急に恐くて堪らなくなったのだそうだった。
「影ばかりでなく、今に晋ちゃんご自分も呑まれてしまうわ。」
綾子が震えながらそんなことを云い出した。
ぞっとするような静けさだった。眠れないでいるうちに、柱時計が四時を打った。それから時計の振子の音が耳について、晋作は朝まで眠れなかった。
「俺まで何だか変だぞ。」
と気がついてみると、晋吉の夢が妙に気にかかった。女中部屋にいつも明るい電燈をつけ放しなのがいけないのじゃないかしら、とそんな馬鹿げた考えまで起った。然し明るい電燈をつけておいても、夜になると、清はその室を恐がって中にははいれなかった。秋子までが変に苛ら苛らしていた。
「とにかく、このままではいけない。どうにかしなくては……。」
彼は考えあぐんだ。
所へ、思いがけなく……実は心待ちにし
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