ね……。」
 然し中井刑事からは、其後何等の音沙汰もなかった。こちらから聞きにゆくわけにもいかなかった。
 思い惑って、二人で長火鉢の前にぼんやりしてると、晋吉は綾子と清とを相手に、玄関の三畳で影人形の遊びに耽っていた。兎や狐は固より陳腐だったし、飛行機やお化も倦きられていた。そしてはしきりに、新らしい人形に苦心していた。
「そら蝦蟇《かえる》が出来た!」
 晋作がそっと覗いてみると、晋吉は壁と睥めっこをして、四つん匐いになっていた。その恰好が変梃だった。
 晋作はふと膝を叩いた。
「おい、僕が面白いものを拵えてやるから、じっとしてるんだよ。」
 彼は其処へ進み寄って、袖をまくった両手を重ねてぬっと差出した。然し、晋吉の蝦蟇を呑もうとしてる大蛇の姿は、思うように壁面へ現われなかった。
「お父さんは駄目だよ。」と晋吉は叫んだ。「お化の手附なら僕の方がうまいや。」
 晋吉は両手でいろんな恰好をして、様々の幽霊の手附をしてみせた。
「嫌ですよ、坊ちゃまは。そんなことをなさると、今に本物が出ますよ。」
 だが、慴えてるのは清ばかりではなかった。
 或夜中に、突然の鋭い叫び声のために、晋作と秋子
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