まっていいですから。」
「そうですね。」そして刑事は一寸考え込んだが、それから元気な声で答えた。「ええ、何れともお知らせしましょう。」

 女中部室の押入は、中井刑事の臨検を受けて以来、その神秘的な魅力を失ったかのようだった。室の陰気さは前と少しも変りはなかったが、押入の張板が一枚、あり合せの板切れで、刑事の手によって置き換えられたことを思うと、今迄の何とも云えぬ不気味さが、朝の光りのように白々しくなって、何処かへ消え失せてしまった。
「やはり何でもなかったんじゃないか。」
「そうね、気のせいだったのかも知れませんわね。」
 晋作と秋子とは押入の前に立って、そんな風に語り合った。
 けれど……その下からまた、新らしい懸念が湧いて来た。
「一体刑事は、あの板を何と思ったのかしら?」
 怪しい幻が消えた後に、科学と官憲とで※[#「捏」の「日」に代えて「臼」、24−下−4]ね上げられる、動かすことの出来ない現実的な幻が、恐ろしい顔付で伸びあがってきた。
「だがそんなことは、俺達の知ったことじゃない。」
 そう自ら云いきかして、晋作は無理に平気を装った。そして女中部屋の中に坐り込んで、子供達と
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