ていた。そして南の山の峰からは、むくむくとした入道雲の白い頭が、もう少しばかり覗き出していた。
平助は其処に佇んで、それらのものを一目に見やった。眼の中がぎらぎらしてくると、二つ三つ瞬きをして、白い街道の上を村の入口まで透し見た。おみつ[#「みつ」に傍点]の綺麗な麦稈帽子も、また誰の姿も見えなかった。
土壌の匂いが彼の肌に染み込んできた。真上からじかに太陽の光が照りつけていた。彼はしゅっと掌に唾液を吐きかけて、鶴嘴の柄を力強く握りしめた。
底本:「豊島与志雄著作集 第二巻(小説2[#「2」はローマ数字、1−13−22])」未来社
1965(昭和40)年12月15日第1刷発行
初出:「青年」
1924(大正13)年4月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2007年8月22日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティ
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