於ける永久の繰返し、宛も瓶の中をぐるぐる飛び廻る蝿のようなものである。
 彼女等の育児もまた、最初の子供のそれを除けば、殆んど機械的な働きに過ぎなくなる。多産なる彼女等は、二年か三年毎に一人ずつ子を設ける。そして赤児から三歳ぐらいまでの保育が、幾回となく繰返される。三歳以上になると、次の児が出来るので、重に女中の手に任せられる。少しずつ個性が出来かけて、溌剌とした心身の営みを示してくる、三歳以上の子の生長を、彼女等は落付いてゆっくり見守る隙がない。渾沌とした幼児の煩雑な世話に、彼女等の心は疲れきっており、粗食をしながら乳を授けるために、彼女等の身体は衰えきっている。そしてそういうことが、二三年を一期として、幾回となく繰返される。
 而も彼女等のそういう生活には、余りに空気と日の光とが欠けている。たまの買物や訪問に出かけたりすること以外には、狭い日蔭の室内で、朝から晩までぐずぐずしている。戸外の大気を吸い打晴れた日光に浴する機会は、ごく稀にしかない。そして何かの機会で、思うさま外気を吸えば風邪を引くし、長く日光に浴していれば眩暈を起す。それほど彼女等は衰微してデリケートになっているのであ
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