つかず、加代子の様子も普通のことでなくそして婆さんが大きな地位を占めていました。
元彦は[#「 元彦は」は底本では「元彦は」]立ち止ったまま眼を見張りました。そして晴れやかににっこりしました。けれどそれとは別に、なにか胸迫る思いがあって、口は利けませんでした。
八重子が異様な声を立てました。その声で、彼女たちは元彦に気付きました。皆の眼がじっと元彦に注がれました。それらの視線のなかに、元彦は黙って進み出で、靴をぬいで室にあがりました。そしてまだ立ったまま、彼女たちの一人一人にすべてを肯定するような頷き方をしてみせました。
底本:「豊島与志雄著作集 第四巻(小説4[#「4」はローマ数字、1−13−24])」未来社
1965(昭和40)年6月25日第1刷発行
初出:「潮流」
1946(昭和21)年4月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2008年1月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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