すた歩いてゆき、時には河原から、時には浅瀬にふみこんで、下手から上手の方へ水脈を物色しながら網を投ずる。その水音と共に、私たちは駆けつける。宗太郎が龕燈の光りをぱっと差しつけると、魚は突然光りに酔う。網は手繰られてしぼられ、河原に引き上げられる。きらきらした銀鱗が見える。網の袋を繰って、魚は河原に放り出される。そのぴちぴちしたやつを、私と宗太郎が魚籠に拾い込むのである。ハヤ、フナ、ハゼ、ドンコ、時には、アユ、ナマズ……雑多なものが捕れる。
 この投網の夜打ちは、なかなか楽しい。河水は方々の堰で水田へ引いてあるから、河原は広く、玉石のところもあれば砂のところもあり、青草が生えてるところもある。足袋はだしで駆け廻っても躓くことはない。さらさらと流れてる清い瀬には、たくさんの魚が泳いでいそうな気配があるし、夜気も水も同じような温度で、肌寒さは感じない。そして初秋の空は、星を鏤ばめてあくまでも高い。ただ、物陰だけがちと薄気味わるい。竹籔の陰、灌木の陰、木立の根本の深い淵陰、へんに闇の色が澱んで、何かが潜んでいそうだ。人間とは縁の遠い未知の、怪しい奴である。其奴に対しては、投網も、何の役にも立た
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