の陰なんかに隠れて、今に鬼が出て来たら、打ち殺すかしばりあげるかしてやろうと、じっと待ちかまえました。
 子供たちは、いやでいやでたまりませんでした。あんなおもしろい鬼を悪い鬼だなどと言って大人たちがそれを待ち伏《ぶ》せしているのが、気になってしようがありませんでした。それでも大人《おとな》たちのいいつけですから、どうすることも出来ないで、心ならずもにらめっこをしました。だけど、もう笑うものなんかあまりなくて、長くにらめっこをしていると、笑うかわりに泣き出すものさえありました。
 するうちに、だんだん子供たちはやけになってきました。みんな立ち上がって、輪になってぐるぐる廻りながら、大声にどなりました。

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だるまさん、だるまさん、
にらめっこしましょう、
わらうとぬかす、
一二三……うむ。
[#ここで字下げ終わり]

 うむ……と気張《きば》って、立ち止まってにらめっこをします。が誰も笑い出すものがありません。でまたぐるぐる踊り廻って、「だるまさん、だるまさん」をくり返します。そのちょうしが次第《しだい》に早くなって、もう踊りっこをしているのか、にらめっこをしてい
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