しと、こういう風になったからって、それは、お互に愛し合ってる証拠にはならないでしょう。あの時、初めての時から、今までずっと、わたしたちは、愛するとか愛しないとか、そんなことは一言も口にした覚えはないじゃありませんか。ですから、あなたに愛する人が出来たり、再婚して奥さんを貰ったりなさる時には、わたしはさっぱりと出ていきますよ。そしてそれまで、こうしていたって、ちっとも差支えありません。あなたは、奥さんがいた時も、たまには、そして今でも、汚い女に接することがあると、告白をなすったでしょう。そんなのは……後味がわるいにきまっています。けれどわたしたちは、後味のわるいような思いをしたことがあるでしょうか。男と女と……満足させあうのはごく自然なことです。御飯をたべなければ、お腹《なか》がすきますし、お腹がすいたからって、芥溜《ごみため》をあさるようなことはしちゃあいけません。わたしたちの仲、濁ってるとお思いになりますか。いいえ、濁ってなんかいません。きれいに澄んでいますよ。お互いに……空腹でもなく、そしてきれいに澄んでいて、そして、愛するとか愛しないとか、そんな面倒なこともなく、落着いて仕事がで
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