ていった。
李はすぐに紹介しはじめた。
「吉村先生です。……こちらは、上山君枝さん、たいへん文学が好きなかたで、いえ、女流文士で、私の先生です。」
「まあ、たいへんなことになりましたね。いつのまにか、女流文士で、李さんの先生で……。」
吉村が一人笑って、云った本人の君枝もまた李も笑わなかった。
君枝はナイフや皿を取寄せて、柿をすすめながら、李との初対面のことを話すのだった――
或る日、夕方、君枝が縁側に腰掛けて雑誌を見ていると、垣根の外から、ボールがはいったから取らして下さい、と子供の声がした。お取りなさい、と君枝は答えた。裏の木戸から人がはいって来る様子だった。それからだいぶ暫くして、もうそのことを忘れた頃、一人の青年が走って来た。手に柿を持っていた。あまり美しい柿だから、ちょっとさわってみると、もう熟して、おいしくなっている。だから、僕たち、一つずつ貰いました。どうぞ下さい。とそう云うのである。眉から眼から鼻立へかけてきりっとした白皙の顔で、それがどこかのびやかなところがあり、それに言葉がぶっきら棒なのがおかしく、(勿論これだけは李の前では彼女は話さなかったが、)何よりも、
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