のか、両腕をひろげ横向きになり、そこへ巡査の足払いが利いて、ばったり地面へ倒れた。倒れたが、すぐ四つ匐いになり、突然、吼えるような喚くような声で叫びだした。襟元を捉えて引起されかけても、彼は必死に大地へしがみつくような恰好で、その声は明らかに泣き叫びとなった。泣き叫びながら、片手と両足とで地面に※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]いた。
 自転車での通行人が立止り、村から人が走り出て行った。そしていつしか男は叫び声を呑み、じっと顔を伏せ、此度は両手を後ろに縛られながら、巡査の先に立って、人々の間を歩いて行った。それが、吉村たち三人のすぐ前をも通りすぎた。
 後を見送って、しばらく無言で歩いた時、ふいに、君枝が李に尋ねた。
「あの男がさっき叫びだしたでしょう、あれどういう意味ですか。」
 あまりに場合を得ない言葉だった。やや返事がなかった。
「僕は知りません。」
「別に意味はないでしょう。」と吉村も殆んど同時に云った。
「あの抵抗も無意味ですわね。……でも、卑怯ですわ。」
 返事がなく、彼女はなお云い続けた。
「先生、そうお思いになりません。言葉の内容は民族によって大変ちがいま
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