歎とも皮肉ともつかない調子で囁きあってるのを、小耳にはさんだのがもとで、僅かな金の工面にも齷齪してる自分の身が顧みられて、うら淋しい気持になった。それが私を更につき落して、浅草公園裏の安宿へ浜田ゆき子を連れこんだ時のことを思い起した。それは幻影に近かった。そして私は考えた。あの時の私の姿を今この席にいる私と置きかえたらどうだろう。私は遂い出されるであろうか。いや、ここにこうして鹿爪らしく控えてる立派な連中にも、人中にもち出せない生活の暗い隅はあるにちがいない。誰だって、何処でどんなことをするか分らない。ただ、こういう立派な紳士たちは、自分で汚らわしいと感ずるようなことは、出来てもしないかも知れない。だが私は、自分で汚らわしく惨めだと感ずるようなことを、平然とやってのけた。これは一体どうしたことだ。
 こういう事柄は、大勢の宴会の中などで考えるべきことではなかったろう。然し私は変に執拗にあの夜の幻影を追った。声がかすれ息が濁って、肥《ふと》ることが荒れすさむことになるような、そういう彼女の肉体を、両手に裸体像を取上げて眺めるような風に、私はもてあそんだ。もう美醜の問題もなく、感情の問題も
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