ます。待っていて下さいね。」
 木山は頷いた。
「だいじな用ですの。きっとですね。」
「今晩、これからでもいいですよ。」
「いいえ、明日にしましょう。ゆっくりお話したいから。」
 彼女の眼は刺すように光っていた。
「いったい、どんなことですか。」
「塚本のこと。お話しましたでしょう。いよいよ、わたくしの方へ帰って来ることになりそうですの。ゆっくり御相談したいから、考えておいて下さいね。」
 木山は一歩退って、彼女の顔をじっと見つめた。
「明日、二時から三時までの間に伺います。きっと、待っていて下さいね。」
「承知しました。」
 木山は冷かに言い捨てて、さっきの席に戻って行った。酒杯を持つ手先がかすかに震えていた。
 塚本夫人も、木山と同時に足を返して、先程の仲間に加わった。隣りに崎田夫人がいた。その方を塚本夫人は顧みて、にこと笑った。
「木山さん、この頃、どうかなすってますわね。ひどく怒りっぽいし、先程は、あんな失礼なことを言ったりして……。わたくし、ちょっとたしなめてやりましたわ。いい気味だった。」
 然し、塚本夫人のその態度は、少し大胆すぎた。木山と彼女との間になにか情愛関係があり
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