揉んだ。勿論蜘蛛に味方してである。然し迂濶に手出しは出来ない。やがて、蜂がぱっと飛んで逃げようとした。とたんに、蜘蛛はくるりと向き直るが早いか、くり出す白糸で蜂を絡めた。次にはもう、蜘蛛の足先でくるくる廻転されてる真白なものに過ぎなくなった。凡てが一瞬間のうちの出来事だった。私は蜘蛛の勝利を祝した。
私はそれですっかり安心してしまった。赤蜂は庭にいる虫類のうちの最も獰猛なものである。それに打勝つとすれば、蜘蛛にとっては万々歳である。
ところが、それから二三日後の午頃、一つの巣の蜘蛛が見えない。そして巣の真中から、一筋の糸が長く垂れている。私は驚いて庭へ下りていった。巣から垂れた糸は、低い躑躅の茂みにはいり、更に地面へ達していて、そこに、女郎蜘蛛がぐったり腹這っている。そして驚くべきことには、躑躅の茂みの周囲に、一匹の赤蜂が飛び廻っていて、夢中に何かを深し求めてるかのように、私が側へ行っても逃げようとしない。私はかっとなって、女中を呼んで蝿叩きを取寄せ、蜂を叩き潰してやった。それから、静に蜘蛛を掌に取上げた。
蜘蛛はぐたりとなったまま、生きてるのか死んでるのか分らなかった。傷はどこ
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