まりたって、黒川から勧められるまま、金儲けをはかったとしても、別に心境に変化を来したからではない。
黒川は金貸しの仕事を単にビジネスとして考えている。本来そうであるべきだと、私も思う。相手の膏血を絞るというような結果は、借り手の参謀から起ることだ。金融が極端に緊縮されてる現状では、金貸業者の助力によって、倒産を免れる事例もあるし、多大の利益を得る事例もあると、黒川が説明してくれたことを、私も承認する。だから、私が彼の尻馬に乗ったとて、非難されるには当るまい。その上、部隊解散のあの当時と同じく、私は或る意味で彼に助力してやることにもなるのだ。
黒川の言うところに依れば、金貸業者の中には、現在、十日間に二割もの利子を要求する者もあるとのこと。然し、黒川はもっと穏当なのだ。一ヶ月間に三割の利子しか要求しない。その代り手堅い取引きにしか応じない。それでも回収不能なこともままある。だから、私がもし出資してくれたら月に二割までは保証すると言う。それによって、黒川自身も儲かる目安が立つし、私はもちろん儲かる。
ところで、私の方のその資金なのだが、固より手元にはない。然しまあ、二万か三万は自分で
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