分を彼に黙許してやった。そのことを彼は恩に着てるのである。彼はその時に得た金を元手に、闇ブローカーを始め、それから金貸しへと転業した。だが、資金はまだ充分でないらしい。
「このようなこと、お気に入りますまいが、ひとつ、銀行に金を預けるつもりで、私に預けませんか。責任を以て、月二割の利子を差上げます。そうすれば、私だって儲けることが出来るし、あなたも儲ける、というわけです。」
軍隊にあっても、彼は私に誠意を示した。今も私に誠意を持ってることが、私には感ぜられた。甘言を以て私から金を引き出そうとしてるのでないのは、明かだった。但し、その金のことだが、私には預金など殆んどなかった。それを卒直に言うと、彼は感嘆したような呻き声を立てた。
久しぶりだというわけで、私は取って置きのウイスキーを彼にふるまった。彼は遠慮なくそれを飲み、そして遠慮なく私に金儲けの方策を授けた。
部隊解放の折、私が殆んど私利をはからなかったことを、黒川は今になってはっきり知って、不思議がりもし、感嘆もしたが、私自身では別に自慢とはしていない。正義感などという問題ではない。程好い道を歩いたに過ぎない。それから二カ年あ
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